マハラジャなあの頃

東京で人気のプレイスポット(死語)だったディスコティック:“マハラジャ” 麻布十番本店。バブル景気の活況期とも重なり、日本全国にその名を轟かせました。

マハラジャ本店

その地で’85年のオープニングから’87年末まで、チーフDJとして主に営業ラスト1時間を担当、黄金期のマハラジャ・サウンドを確立させたDJネーム“ヨサク”こと長谷川晃一郎氏がこちら
http://kh-r.jp/profile

氏こそが僕のダンスミュージック嗜好やDJ観に多大な影響を与えてくれた、真のプロフェッショナルDJでした。ヨサク氏がプレイした毎夜のラスト一時間強は、当時も今もすべての営業DJが見習うべき最高のお手本だったことに決して異論を認める気はありません。

そのセンス抜群の選曲眼はプロDJとして当然としても、2曲を同時掛けしてのクロスフェーダーミックス、つなぎのインパクトや客寄せのピンポイントで短く曲を混ぜるトリックプレイ、のちのマハラジャで御馴染みとなるサンプラーによる効果音のインサート等々、常に手抜きなしで圧巻の一語に尽きるDJテクニックを披露。オンエア曲ひとつをとっても、決してメインヴァージョンに拘らず、最もダンスフロアに映えるヴァージョンをチョイスして使う姿勢にも、フロアの空気を最高の状態にチューニングする”営業”DJとしてのプライドを感じずにいられませんでした。

そう、例えばフリースタイルのヒット・タイトル「Two Of Hearts」という曲。これは最初、アメリカのインディレーベルからリリースされ、好調なフロアアクションに目を付けたメジャーレーベル『ATLANTIC』が版権取得、すぐに再録音版がリリースされましたが、ファースト・ヴァージョンは洗練度に劣る分、アグレッシヴにエフェクト処理されたヴォーカル等、営業用途に使用するのに相性の良いアレンジが魅力でした。勿論、当時のマハラジャでプレイされていたのはこのヴァージョン。また、日本語カヴァーもヒットした「Cha Cha Cha」は出だしにインパクトのあるアメリカ盤オンリー・リミックス・ヴァージョンだけを徹底使用。その他、ハイエナジー・サウンドの大ヒット「Pistol In My Pocket」はインストの長い導入部を経て、ブレイク一閃メインコーラスに突入する“Dirty Harry Mix”を主に。さらにこの当時、毎夜のラストナンバーとして定番化していた「Telephone Operator」をその座から引き摺り下ろしたD.O.A.のメガヒット「Something In My House」は、最もメジャーな“U.S. Wipe-Out Mix”ではなく、セカンド・リミックス“Mortevicar Mix”がチョイスされ、締め括りの一曲として使われました。

以上のように、どこのディスコでもヘヴィーローテされていたヒット曲でさえも、使うヴァージョンに妥協しない姿勢は、まさに一流の職人の姿でした。バブル景気真っ只中とは言え、マハラジャ本店の栄華隆盛はヨサク氏のDJプレイなくしては有り得なかったはず。

マハラジャ本店 DJブース

その後、ヨサク氏が離れたあとのマハラジャでは、よりサンプラーを多用したユーロビート・オンエア率が高くなり、アルティミックス、ホットトラックス等のDJ用リミックス盤が続々と届けられるようになった時期でもあり、 そうしたDJ用プログラム盤から出ているヒット曲は(一部例外はあれど)ほぼ全てそれで賄うという、悪く言えば安易なヴァージョン・チョイスが主流となっていきました。そして、それは同時に、それまで存在した”マハラジャ”ならでは、のスタイルやこだわりの消失でもありました。

そして’90年代半ば過ぎ、麻布本店は静かにクローズの時を迎えますが、その末期レギュラーDJ陣のあまりのお粗末を見るに、ヨサク氏のスピリッツが最後まで継承されなかったことも甚だ残念でなりません。

さらに、時は流れて2011年。東京は六本木に蘇ったマハラジャのオープニングDJとして復活、今もクリエイティヴな第一線で活動を続けるヨサク氏の今後の躍進にも大いに期待するところです。

⇒ Clubberz Records [クラバーズ・レコーズ]

追悼: 菅井えり(ERI)


2016年末、ディスコ族には「おもいがけない恋」で知られるミュージシャンの菅井えり(ERI)さんが天に召されました。ここに謹んでご冥福をお祈りします。

病気療養中と伺って以来、数十年ぶりに幾度となく針を落としていた1986年のデビュー・アルバム『SKIP!』、そしてセカンド・アルバムの『RING MY BELL』・・・
どちらも僕の若かりし頃の想い出が詰まったアルバムです。

Eri Original Albums

ファーストは彼女自身が大好きだったと言う、60’s.アメリカンオールディーズを下地に、“山達”風コーラスと“大瀧ナイアガラ”風アレンジが心地良い「ダンシング・シューズ」、「ON THE RADIO」を収録。さらに「恋はドーナツ・ショップで」「SUNSET STREET」「WITH LOVE」、そして「ロンリネス」といった洗練されたポップ・フィーリング満載の名盤です。(ちなみに彼女のデビューシングル(7″)は「ダンシング・シューズ」。前年に出た「おもいがけない恋」はあくまでプレ・デビュー盤といった位置付けのようです。)

セカンドは哀愁のメロディとコーラスに心癒される、僕にとっては30年変わらぬフェイヴァリット・バラッド「Stardust Paradise」、そして最近、“ライトメロウ”コンピにセレクトされたシティ・ポップ「最後のVacation」がいい。


透明で澄んだヴォーカル、そして彼女の作り出すピュアなメロディは、感傷的な気分で聴くにはちょっと涙腺への刺激が強すぎますが、今はあえて溢れる感情を抑えずに心の趣くがまま彼女に哀悼の誠を捧げたいと思う。

間違いなく僕の青春のワンシーンに刻み込まれた名曲/名シンガーに永遠の感謝を込めて・・・

合掌

⇒ Clubberz Records [クラバーズ・レコーズ]